卒業研究
マルチモーダルデータを用いた会議参加者の貢献度評価
会議では「話す人」だけでなく、うなずきや視線で「話しやすくする人」も貢献しています。発言・うなずき・視線のデータから、発言量だけでは見えない貢献を数値化する研究です。
- 時期
- 2025.10 – 現在
- 発表・実施の場
- 武蔵野大学 データサイエンス学部 中村ゼミ
- 役割
- 個人
- 技術・手法
- 数理モデル / TF-IDF / PageRank / 感情分析 / 感度分析 / AHP / マルコフ連鎖
研究の問い
会議やグループワークの貢献度は、発言の回数や量を中心に評価されがちです。しかし実際には、あまり話さなくても、うなずきや視線で他の人の発言を支え、議論を続けやすくしている参加者がいます。本研究では、発言量だけでは見えない「議論を支える貢献」を、数理モデルで捉えることを目指しています。
背景
学部2年のときに取り組んだ寄与度の数理モデルの研究(第3回 R&D Challenge 優秀賞)を出発点にしています。当時は発話の内容や感情など言語情報だけで評価していましたが、卒業研究では英語の会議を収録した公開データセット「AMI Meeting Corpus」を使い、うなずき・視線といった非言語情報を加えたモデルに発展させ、評価の頑健性や会議の流れの分析まで広げています。
データと方法
- データ:AMI Meeting Corpus の14会議・参加者56名
- 特徴量:発言に関する6つ(発言回数、発言量、トピックの多様性、キーワードの重要性〔TF-IDF〕、発言のつながりの中心性〔PageRank〕、感情スコア)と、非言語の3つ(うなずきの回数・時間、他の参加者への視線の時間)を統合して、個人の貢献度を算出
- 頑健性の確認:言語と非言語の重みを変える感度分析、会議を入れ替える交差検証、重みの決め方を変えるAHP(階層分析法)
- 会議の流れの分析:会議を5秒ごとに「リーダー発言」「サポーターの反応」「参加者発言」「沈黙」「話題の切り替わり」の5つの状態に分け、4,298件の状態の移り変わりをマルコフ連鎖で分析
主な結果(2026年7月の中間発表時点)
- 参加者を「発言」と「非言語」の2軸で4つに分けたところ、「発言は少ないが、うなずき・視線で支える」12名の貢献度の平均(0.411)は、「どちらも控えめ」16名の平均(0.307)を上回りました。ただし、統計的に有意な差とまではいえません(p=0.17)。
- 発言だけでは4位だった参加者が、非言語情報を加えると1位になる例がありました。
- 非言語の重みを0〜100%のどこに変えても上の大小関係は保たれ、比較できた4会議すべてで同じ結果になりました。AHPで重みを決めた場合も、順位の一致率は96.4%でした。
- うなずきの後に発言が続く確率は44.8%で、沈黙の後(32.1%)の約1.4倍でした。この傾向は14会議すべてで見られました。
限界
確認できたのは、うなずきと次の発言の「相関」であり、うなずきが発言を引き出したという「因果」までは断定できません。また、現在は参加者を一人ずつ評価しており、参加者どうしの相乗効果は測れていません。
現在の取り組みと今後
2026年10月から、モデルが出した貢献度が「人が感じる貢献度」と一致するかを、実際に人に評価してもらう実験で検証しています。2026年12月に卒業論文としてまとめる予定です。